さあさあ、どうぞ、私が当家の主で。 うっちゃっといたんだが、一旦お家にお帰りなさい、勘定は少しずつ入れてくれればいい。 穴があったら、入りたい。 出られない訳がある、一歩出れば御用になる。 実は人殺しこそいたしませんが、夜盗、かっさり、やじりきり、悪いことをし尽しまして…。 神田白壁町のガキの頃から手癖が悪く、抜け参りからぐれだして…。 どっかで聞いた文句だな。 とても置いておけない、出てってくれ。 出て行くったって、旦那、先立つものは路銀で。 手文庫を持ってこい。 半紙に包んで十両、どこへでも行ってくれ。 ありがとうございます、でも旦那、こんな派手なナリじゃあ具合が悪い、旦那の着物を頂けませんか。 こないだ測ってみたら、裄丈(ゆきたけ)がピッタリで、先だって越後屋から出来上がってきた結城の対を。 驚いたな。 ついでに、帯も一本。 足袋も、文数が同じで。 かなわないな。 旦那、ありがとうございます。
表で様子を見て来てくれ。 ♪八ツ山下の茶屋女……。 いいのかいウロウロして、唄なんか歌っていて、捕まったらどうするんだい。 お宅の旦那はいい旦那だなあ、よく言やあ仏の旦那、馬鹿だ。 あっしの顔を憶えておけ、俺は中(吉原)や骨(千住)で、居残りを商売(べえ)にしている佐平次というもんだ。 旦那によろしく、ハハハノハーーー、旦那の頭がゴマ塩でござんしたから、おこわにかけました、と。
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