米国のイラン攻撃、日本は遠慮、物申さず
2025-06-28


 21日の米国のイラン核施設攻撃に対して、林芳正官房長官は23日午前の記者会見で、「米国がイランとの対話を求め続けてきたという背景がある」として、「事態の早期沈静化を求めつつ、イランの核兵器保有を阻止する決意を示したもの」と強調し、この点がイスラエルによる攻撃と「異なる」との考えを示した。 このテレビニュースを見ながら、私はアメリカにお世辞を使っていると、つぶやいた。

 各国の反応。 英国のスターマー首相は22日、SNS投稿でイランの核開発計画を批判したうえで、「米国は脅威を緩和するために行動を取った」とした。 欧州連合(EU)の大統領にあたるコスタ首脳会議常任議長は、「外交は中東地域に平和と安全をもたらす唯一の手段だ」とSNSに投稿した。 フランスのバロ外相は「空爆について、深刻な懸念を持っている」とSNSの投稿で述べた。 中国外務省は報道官声明で、攻撃は「国連憲章の趣旨や原則、国際法に違反し、中東の緊張を悪化させる」と批判した。 ロシア外務省は声明で、「主権国家の領土に攻撃を加えるという無責任な決定は、いかなる理由を付けたとしても、国際法に対する深刻な違反だ」と非難した。 インドのモディ首相は22日、イランのベゼシュキアン大統領と協議した後、SNSに「即時の緊張緩和や対話と外交、地域の平和や安定などの早期回復を求めた」と投稿し、緊張の高まりに懸念を示した。

 石破茂首相は22日、事態の推移を注視する考えを強調し、米国の軍事介入に対する日本政府としての明確な態度表明は避けた。 イスラエルによるイラン攻撃時には、イスラエルの軍事行動を「到底許容できない」(岩屋毅外相)と非難する談話を出したのと対照的だ。

 朝日新聞のインタビューに答えた小谷哲男明海大教授(安全保障論)の見解が、明快だ。 「米国が、仮にイランの将来的な核保有を阻止したかったのだとしても、「予防攻撃」は国際法では認められていない。」 「米国では憲法上、宣戦布告の権限は連邦議会に与えられており、他国を攻撃する場合は原則的に連邦議会の承認が必要だ。今回はそうした手続きは踏んでおらず、国内法的にも問題がある。」

 朝日新聞の佐藤武嗣論説主幹は、23日朝刊「座標軸」で、「今回の米軍の介入は中東情勢にとどまらず、アジア情勢に深刻な影を落とす。湾岸諸国の反発はもとより、イスラム教徒の多いアジア諸国の「米国離れ」を招くのは避けられまい。」 「国際法違反のロシアやイスラエルが責めを負わず、米国までもが国際規範に背く形で武力行使を続ければ、台湾への「武力行使も辞さない」とする中国に自制を促す正当性を失い、中国が武力行使に踏み切るハードルも下げかねない。」 「日本の同盟国である米国に、国際法堅持の姿勢がいかに対中政策でも重要かを説き、米国以外の有志国とも連携し、不条理の連鎖を止める行動を起こす時だ。傍観を決め込めば、日本と地域秩序に跳ね返ってくる。」と指摘した。

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