なんのために生まれて なにをして生きるのか
2025-06-30


やなせたかしの「知恵 その二」「しなやかに 信念を持っていよう」
 初め『あんぱんまん』は編集者や大人に酷評されたが、保育園や幼稚園の幼児の間で人気になり、その絵本シリーズは累計8000万部になった。 やなせは、幼児向けでも、伝えるべきメッセージは、ちゃんと伝えた。

「ほんとうの正義は、けっしてかっこいいものではないし、そして、そのために自分も深く傷つくものです。そしてそういう捨身・献身の心なくしては正義は行なえません。(『あんぱんまん』あとがきより)」 ゆずれないものは、いくつかあった。

顔を食べさせることは究極の自己犠牲、つまり死の象徴だが、アンパンマンの命はまたよみがえる。 パン作り名人のジャムおじさんが助けてくれる。 一話ごとに犠牲とよみがえりが繰り返されるのが、アンパンマンの世界の基本的な構造なのだ。 戦争でたくさんの命が失われ、だが自分は死ななかった。 弟の千尋は最後に会ったとき「ぼくはもうすぐ死んでしまうが、兄貴は生きて絵を描いてくれ」と言ってくれた。

アニメ化されたのは、最初の絵本が出てから15年、やなせ69歳の時だった。 日本テレビのプロデューサー、武井英彦は、息子の幼稚園の参観で、ボロボロになった「アンパンマン」の絵本を見て、これはいけると確信した。 企画会議では数年にわたり何度も却下されたが、自分で制作費の手配をつけて、1988(昭和63)年10月「それいけ! アンパンマン」の放映にこぎつける。 やなせは主題歌「アンパンマンのマーチ」をつくった。

そうだ うれしいんだ
生きる よろこび
たとえ 胸の傷がいたんでも

なんのために 生まれて
なにをして 生きるのか
こたえられないなんて
そんなのは いやだ!

やさしい 君は
いけ! みんなの夢 まもるため

 梯久美子さんが忘れられない、やなせたかしの言葉。 「天才であるより、いい人であるほうがずっといい」。
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