ことしのイタリア賞(第57回)を受賞したNHKのドキュメンタリー『映像詩 里山 命めぐる水辺』は、何度も放送されたので、ご覧になった方が多いかも しれない。
琵琶湖周辺の水の里に住む、田中三五郎さんの一年を追う。 秋、小舟で棹 さして、水路へ漁に出る。 篭を沈めてあるのを「もんどりの漁」といってい たようだが、魚がいったん篭に入ると「戻らない」仕掛から来ている名だろう か。 鮒を主に取るのだが、一緒に入る小魚など余りの魚は、木箱に放って置 く。 漁を見ていたトビやアオサギなど、野鳥たちのエサになるのだ。 自然 と調和しながら生きる、「共生する」、この里の暮しの心が、そんなところにも あらわれている。 カイツブリ、オオバンなどの鳥も出てきた。
取った鮒は、馴鮨(なれずし)にする。 集落を湧き水の水路が流れていて、 それを各戸に引き込んでいる水場を「かばた(川端)」という。 さまざまな水 の恵みを受ける場所だ。 顔も洗えば、野菜も洗い、鮒もさばいて洗う。 冬、 温かく、夏、冷たい。 夏は果物や野菜を冷やす。 その水路には、梅花藻が 生え、ヨシノボリという、親になると7センチぐらいになる、ひょうきんな顔 のハゼの仲間が住んでいる。 日本最大のトンボ、オニヤンマの幼虫もいる。 人の流す屑などがエサにもなり、人と生き物が水路の恵みを分かち合いながら 暮している。
湖畔の葦(よし)にも、葦焼きから、生い茂って、葦刈までの一年の営みがあ る。 三五郎さんの家でも一年が巡って、仕込んでおいた鮒鮨が熟成した頃、 正月がやってくる。 ご近所の人と馴鮨を囲んで、暖かい団欒の時を過ごす。 昔ながらの身近な自然と一体になって暮す人々、その生活はヴァーモントのタ シャ・チューダーに通じるものがあった。
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