『まほろ駅前多田便利軒』
2006-08-01


 李承Y(イ・スンヨプ)は29歳。 8月18日の誕生日までには、日韓通算400 号ホームランを打てるだろう。 そうでないと、一人一生懸命やっているので、 小関が3塁を踏まなかった幻の一本が、いかにも可哀想だ。  三浦しをんさんも29歳。 13日に、第135回の直木賞に決まった。 受賞 作の『まほろ駅前多田便利軒』(文藝春秋)を読む。

 まほろ市は東京都なのだが、その西南部に神奈川に突き出すような形で存在 する。 JR八王子線と私鉄箱根急行線、略してハコキューが交差している。 と いうから、町田だろう。 多田啓介は、白の軽トラックを持ち、事務所兼自宅 の古ぼけたビルの一室で便利屋「多田便利軒」を営んでいる。 そこに都立ま ほろ高校の同級生で、高校時代にある因縁があった、行天春彦が転がり込んで 来る。

 便利屋というのは、どんな仕事をするか。 市民病院に入院しているおばあ さんのところに、息子になりかわって見舞いに行く。 掃除や草取り。 年末 年始に、チワワを預かる。 横中、横浜中央交通のバスが間引き運転している と疑う依頼人の意を受けた、バスの運行時間調査。 駅前の進学塾に通う小学 生を、帰りに家まで届ける。 だいたいの料金は、一時間二千円。

 駅裏には、その先に米軍基地があるためか、歓楽街があり、コロンビア人の 娼婦ルルと名乗るあやしげな女たちや、それにつながって、砂糖のような粉を 売る男などがいる。 チワワの飼い主が、犬を預けたまま、行方不明になった ことから、チワワの新しい飼い主を探していて、多田と行天は、その駅裏世界 とかかわりを持つことになって、物語が展開する。

[文芸]

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