給料を袋詰めする福沢諭吉
2007-05-31


 『三田評論』4月号の座談会「時事新報に学ぶ独立の精神」で、西川俊作先 生はご自身の「時事新報」についての関心をつぎのように述べている。 『福 澤諭吉全集』に収められている時事新報関係の資料は、大体会計データなのだ が、そこからわかるのは、時事新報社とは言っているものの、あれは福沢諭吉 の個人企業だということで、その点から経営者としての福沢に関心をもって調 べている、と。

 そのご研究の成果の一つが、『福澤諭吉年鑑33』(2006年・福澤諭吉協会) に収録されている論文「時事新報社主 福澤諭吉」だ。 それを読んで一番面 白かったのは、福沢が社員の月給を自分で数えてめいめいの袋に詰め、手渡し ていたという話だ。 それは一時時事新報社で働いたことのある池田成彬の回 顧談にもあるという。 福沢は自分が旅行のため月末不在となる場合には、あ らかじめ給料包を用意しておく周到さであった。 社員給与の査定・評価がも っぱら福沢によって決められていたのはともかくとして、福沢は社主でありな がら、みずから毎月の金銭出納事務を怠らぬ律儀な性分だったというのだ。

 長年、零細企業の経理担当だった私は、給料計算からその袋詰めまで一手に やっていた。 ガラス工場の職人が相手ということもあって、銀行にどんなに やいやい言われても、銀行振込にせず、ずっと新札の現金支給を続けていた。  西川先生の論文で、また一つ、福沢諭吉に親近感を抱いたのであった。

[福沢]
[身辺雑記]

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