扇遊の「蜘蛛駕籠」を楽しむ
2007-11-01


 志の吉、我太楼、歌丸と芳しくなかった落語研究会だったが、仲入後の入船 亭扇遊「蜘蛛駕籠」で救われた。 鈴ヶ森で駕籠屋が客待ちをしている。 通 る人に「へい、駕籠」と呼びかけて、なんとか乗せようとする。 兄貴分が雪 隠に行っている間に、まだ二、三日目の新米が、前の茶店のオヤジを乗せてし まうところが、可笑しい。 紺の前掛をし、箒とちりとりを持っていたのに…。 

川崎大師に行った帰りの、酔っ払いを勧誘して、えらいことになる。 六郷 の渡しのところで、「あーら、熊さん」と声をかけられたのが、辰公のかみさん のおテツさんで、すっかりゴチになった、辰公とおテツさんの祝言は…という リフレインが、これまた可笑しい。 駕籠屋も憶えてしまうが、聴いているわ れわれも、憶えてしまう。 なんでもない噺をやって、可笑しく聴かせる。 こ れが芸だろう。 入船亭扇橋の弟子はみんないいが、この日の扇遊はとてもよ かった。 先代の文楽が次第に乗ってきて、顔も紅潮して、現出する楽しい世 界を思い出した。 拍手、拍手。

[落語]

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