「独立自尊」について
2008-05-21


 ある人に「独立自尊」について聞かれて、こんな返事をした。  福沢諭吉は明治31(1898)年9月26日に脳溢血症を発し、一時危篤になり ましたが、11月には三田山上を散歩、翌32年3月には再び揮毫が出来るよう になりました。 この大患後の福沢の関心は日本の近代化に伴う国民の道徳水 準の程度にあり、新しい時代に処する道徳の在り方を示すために、主だった門 弟を集めて「修身要領」二十九ヶ条を編纂させました(明治33(1900)年2 月24日発表)。 各条を流れる根本理念で、中心に据えられたのが「独立自尊」 です。 富田正文さんは『考証 福澤諭吉 下』で「「独立自尊」の四字の標語は 明治33年にできたことばで、この四字の加わっている書はすべて病後の揮毫 と見て差し支えない」と言っています。 なお「独立自尊」という四字熟語が 福沢によって最初に使われたのは、明治23(1890)年8月の時事新報論説「尚 商立国論」であり、明治30(1897)年6月に行われた演説「人の独立自尊」 でも使われているそうです。

 「独立自尊」の説明は、わかりやすくて好きなので、幼稚舎教諭だった桑原 三郎さんの『福澤先生百話』(福澤諭吉協会叢書)から引いておきます。 「独 立とは、他人の世話にならないことです。自ら労して生活の資を得ること、更 に、自分の進退を他人に依頼しないで、自分で判断する智徳の力を有(も)つこ とであります。」 「自尊というのは、自分を大事にして、自分の智徳を高めるようにすることで す。人が他の動物と異るのは、人間だけが改良進歩の心を有つ所で、しかも、 人の向上心には限りが有りません。だから、生きている限りは勉強努力して、 自分の品位を高くし、世のため人のために尽くすように、それが自分を仕合せ にする道だ、ということです。」

[福沢]
[慶應]

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