毎度言うが、歌武蔵の出の同じ台詞は、いい加減にやめてもらいたいと思う。 客の記憶力に信をおかない性格なのか、死ななければ直らないのか。
大きな身体で、普通の人なら二反で出来る着物と羽織に、三反要るという。 飛行機のエコノミークラスの椅子に、座るというより、はまる感じ。 機内食 を置くテーブルも、向こう側に傾斜したままで、飲み物は穴に入らないから、 手に持って、飲み切らなければならない。
高速バスに夫婦ものが乗っている。 南側の陽の当る席で、あまりの暑さに 奥さんがノドの乾きを訴えるが、ノン・ストップだ。 そばの男が、氷のカチ ワリでよければ、とクーラーボックスから出してくれた。 ヂュル、ヂュルと、 ノドを潤し、有難い、助かった。 もう一つ、もう一つと、七つ目になった時、 その男、「あげるのは、いいのだけれど、中の猫の死骸が向うに着くまで、持つ かどうか」
虫除けのまじないだと隠居が家に吊るしている「蛇含草」、ウワバミが何かを まるごと呑んで、この草をなめると呑んだものが溶けると聞いて、甚平を着た 男が半分譲ってもらう。 火が熾きていて、越後から来た夏場の餅を焼こうと すると、男は五、六十なら朝飯前だという。 せわしなく餅を食う歌武蔵の顔 が、見せ所だ。 ブルドックの如し。 いろいろな芸当で、餅を食う。 鯉の 滝登りの餅、ブランコの餅、左の脇の下から背中を回す、淀の川瀬の水車(み ずぐるま)の餅(拍手を要求する)。 あとは、「そば清」(「蕎麦の羽織」)と同 じ展開。
終演後、オチケン出身の友人は、痩身ながら一言で「歌武蔵の「蛇含草」は 汚い」と、押し倒した。
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