「浮世絵とは何か」が分かる展覧会
2009-10-11


 三井記念美術館で「夢と追憶の江戸―高橋誠一郎浮世絵コレクション展」の 前期を見てきた。 慶應義塾創立150年記念と銘打たれているのは、高橋誠一 郎先生の没後、そのコレクションの内、約1500点が慶應義塾に寄贈されたか らである。 質の点では世界有数といわれる高橋コレクションは、全体では数 千点あったらしく、春画のようなものも含まれていたという。 展覧会に入っ たとたんの菱川師宣「衝立のかげ」は、一見女二人だが、実は男と女のからみ、 吉原でのこれからという場面だ。 組み物で、次第に春画に展開していくらし いが、それは慶應義塾の所蔵ではない。 高橋先生は、残念無念と思われてい るか、苦笑いをされているか。

 「浮世絵」とは、何か。 江戸時代に発達した風俗画の一様式、遊里と芝居 町に代表される都市の歓楽郷、いわゆる「浮世」に取材し、主要な表現手段と して大量生産のできる版画形式を用いた点に特色がある、とブリタニカ国際大 百科事典にある。 浮世絵版画技法は、初め万治年間(1658〜61)に、菱川師 宣が「墨摺絵」を制作。 その後、延宝〜正徳期(73〜1716)頃、墨摺絵に筆 彩色する「丹絵(たんえ)」「紅絵」が流行、享保〜寛保期(16〜44)頃には「漆 絵」も行われた。 次いで延享期(44〜48)頃、墨摺絵に紅や緑など2から3 色の色板を重ねて摺る板摺版画の「紅摺絵」を工夫。 それをさらに発達させ て、明和2(65)年鈴木春信らが多色摺木版画である「錦絵」を創始し、浮世 絵の黄金時代を迎えた。 『広辞苑』は、その主題を、遊里や芝居の情景、美 女・役者・力士などの似顔絵を中心とし、歴史画や風景・花鳥に及ぶ、と葛飾 北斎・歌川広重に代表される風景画にも目を向けている。

 高橋コレクションを見て、浮世絵のそれぞれの時代と主題のすぐれたものを きちんと集めてあるなあ、というのが感想だった。 帰って『三田評論』10月 号、渡辺保・渡邊章一郎・内藤正人という皆さんの「三人閑談」を見たら、「教 科書のような浮世絵の集め方」とあった。

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