喬太郎の「竹の水仙」
2010-01-19


 喬太郎、新年の挨拶の後、一番よい着物を着て来た(化繊ではございますが)、 でも失敗した、ほぼ座布団と同じ色だった、と。

 「竹の水仙」は、左甚五郎ものだ。 鳴海の宿、両隣の大きな宿屋にはさま れ、夫婦二人でやっている汚い宿屋、大松(おおまつ)屋佐兵衛。 風流にも 部屋の中から月見が出来、畳はタタがなくてミばかり、国敗れて山河ありとい うが、障子破れて桟ばかり。 二階で半月も長逗留している客、朝昼晩に一升 ずつ、お八つにも五ン合の酒を飲み、三両三分二朱の勘定を溜めた。 見る目 は持っているという主の佐兵衛、女房にせっつかれて、そんなことを言えれば、 お前と一緒になっていないと言いつつも、交渉に行く。 男は、三度三度わけ のわからぬものを食わせてもらって、それは安いな、わかった、わかった、き れいにする。 払いたい、頂きたい、気持がピタリと合った、それがよい。 生 涯に三度、運が向いて来る、来れば払える。 文無しだった。

 商売を訊けば、バンジョウ(番匠)、上方の大工で、彫り物をする。 裏の竹 薮で、根から二尺を二本、伐って来い、細工物をする、と。 文無しで威張る から、主が不満だと、私は客だと、ホッペタをヒクヒクさせる。 呼ぶまで、 けして覗いてはならん。 女房は、人間じゃないかも、鶴が機を織っているか も、と。 竹の先にダンゴが付いたようなものが出来、往来から見える所に飾 れ、売るのはかまわん、町人なら五十両、武家なら百両、と言う。

 一輪差に挿しておくと、夜中に水がなくなる。 毛利大膳太夫お国入りの行 列が通り、殿様がよき香りだ、京の御所で拝見した「竹の水仙」だ、と。 こ こから喬太郎が乗って来て、お使いの侍、宿役人、毛利の屋敷(宿所だろう) の重役(お使いとは別人か)が登場、それぞれに爆発する。 「宿役人さん、 そんなにオーバーでいいんですか、研究会で」、「何をテンパッテおる」、(派手 な動きに)「お前は柳家権太楼か、すっごいムカツク」、「この品は売物(ばいぶ つ)か」「作ったのは怪物」「その位では、笑わないぞ」、「価(あたい)は?」 と訊かれて手を鼻にやり「一人称ではない」「百両でございます」。

 亭主のおかしな様子に「洗脳されたのか。もしもし、最高ですか?」という 女房に、生れて初めて文句が言えた大松屋。 客は毛利と聞いて三百でよかっ たと、五両を宿賃に、十両を取り、あとの八十五両を茶代としてあげよう、借 金を返す足しになるか、と。 大松屋、山海のわけのわからぬ珍味でもてなす から、ひきつづきご逗留を、竹はいくらでも生えているから…。

[落語]

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