さん喬の「白ざつま」後半
2010-07-09


 さん喬は、問題の巨大な仏壇(名古屋や北陸にはありそう)を「お厨子」と 言い、大旦那がそれを買ったのは血筋だと、若旦那に言わせる。 おっ母さん が死んだ時、あちらの寺、こちらの寺で、お厨子を拝んでいたが、合羽橋の仏 具屋で立派なお厨子を見つけ、妻を弔うために買おうとして、断わられて、泣 いた。 もう一度頼み込んで、買うことになったが、大きすぎて店に入らない、 作り直して入れた。 朝から晩まで、そのお厨子の前で拝んでいたが、半年ぐ らい経って、三河屋さんの法事でお寺のお厨子を見たら、またお寺に通うよう になった、と。

 大旦那が蔵前のお和歌の所へ出かけたあと、番頭は言いつけどおり、若旦那 の誠之助を表に出さないようにしているが、誠之助は番頭が「百年目」の番頭 のように遊んでいて、浜町に清元某といういい女のいる事実をつかんでいて、 脅す。 番頭は妥協、菊江お姐さんを店に呼ぶことになる。 店は早仕舞い、 大御馳走と酒を誂えて「味噌蔵」状態となる。 藤ドンを呼びにやると、「いい んですか、お店に上がっても」と、三味線を抱いた菊江がやって来る。 洗い 髪に、白ざつまをざっくりと着、帯をゆるめにぞろっと締めて、赤い蹴出しが ちらりと…。

 大旦那が「ご町内でお祝いごとでもあるのか」、貞吉「ウチですよ」と、帰っ て来る。 「菊江を隠せ」、お刺身も、鍋も…。 「誠之助、お和歌は亡くなっ たよ、死んだよ。 何で、私と一緒に来てくれなかったんだ。 私の後ろを、 お和歌が見えない目で探している。 酷い風邪を引いて、立つことも出来なく て、と言うと、早く若旦那の風邪が治ればいいですね、私が元気ならお世話が 出来るのに…、お父っつあんと一緒に、ウチへ帰りたい、と言ったとたんに、 腕の力が抜けた。 誠之助、一生背負え。 きっと、もうこの家に帰っている だろう。 仏間へ行って、一緒に菩提を弔おう」

 お厨子の扉を開く。 「ハッ。 誠之助、お和歌は、もう帰っている。 ど うぞ、浮んで下さい」 白ざつまの菊江、「ハイ、私もこのまま消えとうござい ます」

[落語]

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