伊藤礼さんの『自転車ぎこぎこ』
2010-09-13


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 伊藤礼さんの『自転車ぎこぎこ』(平凡社)を読んだ。 <等々力短信 第962 号2006.4.25.>に書いた『こぐこぐ自転車』の続編である。

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 若い時から肝臓病の持主で、すぐに横になっていた伊藤礼さんだが、68歳か ら自転車に乗り始め、2003年に70歳だったから、新しい本の出た2009年に は76歳になった。 伊藤礼さんは伊藤整の次男、相撲の野球賭博問題でテレ ビによく登場した伊藤滋さん(都市工学)が長男だそうだ。

 『自転車ぎこぎこ』も『こぐこぐ自転車』と同じようなことが書いてあるの だが、伊藤礼さんも本の中で、こんなことを言っている。 自転車で坂を登っ て下るたびに、あんなに登ったからこんなに下るのだと、いつも同じことを考 えるので、無駄のような気になるのだが、人生は所詮同じようなことのくり返 しなのかと、またいつも考えるのだ、と。

 房州輪行(サイクリング)で、カルピスウォーターだと思って買った紙パッ クが、カルピス原液だった。 それをうっかりごくりと飲んだ。 「でも飲め ないこともないね」と、同年の友人ヨコチ君が慰めてくれたので、そう飲めな いほどではなかったような気がしてくる。 いっしょに食べた柏餅の消化も速 まったにちがいなく、自転車で走っていると、ふだん気付かないそういうこと が分かるようになる。

 勉強になる。 房州の「九十九里浜」、白浜から犬吠崎までの総距離150キ ロの中にあるから、九十九里=396キロはない。 これは「白里」(大網白里町) という土地に由来する。 「白」は「百」から一を引いたものだ。 歌の下手 なひとを「犬吠」というのに似た洒落だ。 言うまでもなく、犬吠崎は銚子の 外れにある。

大晦日の夕方、四ッ谷で、中国人かベトナム人の青年に「ダイエット・ビル ディング」の場所を訊かれた。 目の前に主婦会館があるが、ちがうだろう、 真っ暗で、誰もいない。 交番を教えて、別れた。 しばらく自転車を漕いで いて、気付いた。 「ダイエット・ビルディング」といえば、国会議事堂じゃ ないか。 以前は英語の先生をしていたのに、この三ヶ月間、67キロになった 体重を落すダイエットをしていたせいで、気付かなかったのだ。

[文芸]

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