円空仏の魅力に浸る
2011-12-05


 埼玉で、なぜ円空仏か。 参考品を含め、170躯という数の多さに驚く。 埼 玉県は、岐阜・愛知両県に次いで、円空仏が多く確認されているのだそうだ。  特にさいたま市の薬王寺や正法院、春日部市観音院などには、かなりの数が残 っている。 埼玉県東部に集中しているのは、はっきりしたことは判らないが、 一つには日光街道もしくは日光との関連が考えられるという。 日光市瀧尾神 社保存会蔵「稲荷大明神立像」の背面に「日光一山一百廿日山籠/(梵字) 稲荷 大明神/金峯笙窟圓空作之」の墨書銘があって、円空(寛永9(1632)年〜元禄 8(1695)年)が笙窟で修業したのは延宝3(1675)年とされるから、それに近い時 期の作と考えられ、輪王寺にも4躯が確認されている。 神像は円空の初期に つくられたという。 図録には、埼玉の作品には初期のものはなく、円空が関 東を訪れたと考えられる時期を外れるものはないようである、しかし、それが いつごろで期間がどのくらいかを限定するのは困難である、とも書かれていて、 何が何だかわからなくなる。

 もう一つ、埼玉県東部の低地は、水害等の被害の多かった地域であり、建物 の古材を活用したと考えられるものの多い円空の作品は、古い堂宇が水害や火 災で失われた際に、かろうじて残った材で復興を願って造像したというような ことがあったかもしれないという。

 展示を見て、解説を読み、教わるところが多かった。 (1)あらためて、円空 仏の「笑い」の魅力。 (2)杉や檜、桐などの丸材を二つ割にして、木表側に彫 刻し、背面は割り放ったままにする作り方。 四つ割にして、割り放ち面に彫刻 する作り方。 (3)ときどき使われる渦巻状の「雲」文は、来迎の図や像で見ら れる、仏が人を救いに来る飛雲と考えられること。 (4)まず「同じものはない」 こと。 頭の上には頂蓮、頭髪は逆立てたり松笠状や肉髻(にっけい)、顔には 特徴ある三角形の鼻、歯牙、手には羂索、宝剣(鍔あり、鍔なし)、宝珠、宝瓶、 宝塔、薬壺、水瓶、錫杖、金剛棒などを持つ。

 さいたま市砂観音堂の「観音菩薩立像」高さ113.8センチ、「菩薩形立像」高 さ94.2センチは、かつてはお堂に自由に出入りする子供たちの遊び道具だった ため、表面の摩耗が激しく、後者などは顔の表情がまったく失われている。 彫 った総数12万体といわれる円空仏が、いかに身近で、親しまれていたかを示 す、一つの証左かと思われた。

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