明けましておめでとうございます。 今年も落語研究会の覚書を中断して、 俳誌『夏潮』一月号の親潮賞応募作を、初笑いのタネにご覧いただくことにし た。 タイトルは「枝豆の王」、七十年間の食べ物の思い出を並べた。 第3 回の今年、黒潮賞(60歳未満)は櫻井茂之さんの「五百余羽」、親潮賞は田島 輝子さんの「蓑虫」が受賞した。
春告魚焼く煙の中に母は居た
母逝きて鯵の煮方を訊き洩らす
木曽川の鮎の煮浸し卵びしり
海鳴りや椀をはみ出す蟹の脚
その母の蟹と蝦蛄とを茹でてくれ
焼茄子にほんのり残る焦げ臭さ
枝豆の王鶴岡のだだちや豆
大石田茂吉も食みし西瓜かな
秋茄子を七輪で焼くしうしうと
むかご飯死んだ親父の猫背して
塩で食ふ鯊天婦羅の軽さかな
お接待土佐文旦の持ち重り
生牡蠣や喉にも味蕾ありにけり
鰰の卵の粘り喉つまる
荒海にもまれし鱈のどんがら汁
二の酉や堅焼のみの煎餅屋
湯豆腐はちりちりしたらと祖母と母
友の愚痴鋤焼甘く煮詰りて
千疋屋苺ショートの聖夜かな
煮こごりや姉(あねや)小路のおくどさん
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