食いしん坊俳句「枝豆の王」
2012-01-01


 明けましておめでとうございます。 今年も落語研究会の覚書を中断して、 俳誌『夏潮』一月号の親潮賞応募作を、初笑いのタネにご覧いただくことにし た。 タイトルは「枝豆の王」、七十年間の食べ物の思い出を並べた。 第3 回の今年、黒潮賞(60歳未満)は櫻井茂之さんの「五百余羽」、親潮賞は田島 輝子さんの「蓑虫」が受賞した。

春告魚焼く煙の中に母は居た

母逝きて鯵の煮方を訊き洩らす

木曽川の鮎の煮浸し卵びしり

海鳴りや椀をはみ出す蟹の脚

その母の蟹と蝦蛄とを茹でてくれ

焼茄子にほんのり残る焦げ臭さ

枝豆の王鶴岡のだだちや豆

大石田茂吉も食みし西瓜かな

秋茄子を七輪で焼くしうしうと

むかご飯死んだ親父の猫背して

塩で食ふ鯊天婦羅の軽さかな

お接待土佐文旦の持ち重り

生牡蠣や喉にも味蕾ありにけり

鰰の卵の粘り喉つまる

荒海にもまれし鱈のどんがら汁

二の酉や堅焼のみの煎餅屋

湯豆腐はちりちりしたらと祖母と母

友の愚痴鋤焼甘く煮詰りて

千疋屋苺ショートの聖夜かな

煮こごりや姉(あねや)小路のおくどさん

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