桂平治の小佐田定雄作「幽霊の辻」
2012-07-03


 桂平治、私以外は皆落語協会で、楽屋でいじめがひどい、扇遊は足袋を隠し たりする。 私も報復に、「巌流島」のあらすじと下げをしゃべります。 そん なことはしませんが。  たまに学校寄席というのに呼ばれる。 子供と年寄はなくならない。 この あいだは、裾野高校という所へ行った。 レベルは、中の下。 亡くなられた 三笠宮寛仁親王殿下が妃殿下と、お忍びで浅草演芸ホールにいらっしゃったこ とがある。 ボンボンブラザースに手を叩き、トリの米丸では居眠りをしてい た。 師匠の家の近くに豊島園があって、招待券を頂くから(当節は来ないけ れど)、師匠の孫を連れて、ハイドロポリスという所へ行ったものだ。 ウォー タースライダーや流れるプールがある。 遊園地にはお化け屋敷がある。 コ レ(小指を立てる)と行く、タガメじゃないのと。 手をつないできたりして、 生首が出たり、水をかけられたりすると、キャアキャア、抱きつく、首がドー ン、おっぱいもんだりする。 男は駄目、声が低い、股間をもんだり…。

 弱っちゃったね、今日中に堀越村って所へ届けなきゃならないのに、日が暮 れて来た。 明りが見えて、茶店が一軒、婆さんは、あした順子そっくり、ひ ろしはどうした。 婆さんは店を閉めようとしていたが、十年ぶりのお客様、 やってますよ、という。 堀越村は、どっちへ行ったらいいのかな。 案内を する、支度をするから、先に行って下さい。

 お日様が沈むのを、拝みましょ、と婆さん、あんたも拝むの。 夕日にキラ キラ光っている池は、水子池。 昔は貧しかった、赤さんが死んで生れて来る、 木の箱に入れ、池に行って流す。 誰も話さないけれど、誰もがやっていた。  夕方、脇を通ると、池の中から「おぎゃーあ」「遊ぼう」という声がする。 池 の中から小さな手が沢山に出て、引っ張り込む。 だから、あんた、そこを通 んなさい。

と、小佐田定雄作「幽霊の辻」になるのだが、桂平治、桂枝雀のビデオを見 過ぎたのではないか。 後ろ斜め上に手を上げる形などは、その典型だ、オー バーな仕種や騒ぎ方が、枝雀そっくりなのに、ちっともおかしくない。 すっ かり、すべってしまった。 枝雀だと、おかしさの中に、怖さもあったと思う のだが、怖いというより、暗いやりきれない感じだけが残ってしまった。 先 を書く気にもならない。

 私は本来、桂平治のとぼけた味が好きだ。 「松山鏡」など田舎の噺にも、 純朴な感じが生きていた。 今回、新作で、桂枝雀のネタだということと、9 月に11代目桂文治を襲名することが重なり、ハイテンションになり過ぎて、 すべってしまったのではないか。 と、愚考した。

[落語]

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