ジブリ現場の凄腕の職人たち
2013-07-29


 スタジオジブリの現場への密着取材で、キーになる人が浮かび上がる。 ま ず鈴木敏夫プロデューサー、役目は「宮崎駿のお守(も)り」と宣伝だけだと 笑う。 だが、プロデューサー室の鈴木さんのアシスタント白木伸子さんが、 鈴木さんのスケジュール表を見せたら、びっしり詰まっている。 この白木さ ん、鈴木さんの『仕事道楽』(岩波新書)にも登場している。 会社に連れて来 た6歳の男の子と、宮崎駿監督が楽しく遊んで、毎週土曜日に連れて来なけれ ばならなくなった。 『崖の上のポニョ』の宗介(5歳)のための観察だった。  男の子が、遊んでもらった監督に自分で作ったプレゼントを持って来た。 そ れを映画でも使った。 別の個所、遠慮会釈なく、存分に言い合うことで、仕 事が成立しているという話。 監督の宮さんは、鈴木さんのところにいろいろ 言いに来て、鈴木さんはそれを反駁する。 白木さんによれば「百戦百勝です よ、鈴木さん」そして続けて「でも宮崎さんもすごい。あれだけ鈴木さんに負 けながら、それをものともせずまた言いにくるのはすごい。」

 動画のチェックは、舘野仁美さん(52)、『風立ちぬ』16万枚の動画を一人で チェックした。 絵コンテから、レイアウトをして、原画が描かれる。 原画 のクリンナップ(清書)は鉛筆で描く。 1枚の原画から、パラパラ漫画のよ うに5枚ほどの動画が描かれる。 予告編でもやっている、菜穂子が丘の上で 絵を描いていて、スカートが風に揺れるシーンだけで、245枚の動画が必要だ そうだ。 舘野さんは『となりのトトロ』(1988年)から、この仕事を担当し ている。 「等々力短信」にも書いた、関東大震災で避難する群衆を描いた上 野広小路のシーン、その群衆一人一人の動きを手で描いている。 その職人技 を「よくやったね」「一番すごいカット」と話していた。 宮崎駿監督も「今度 の映画では、3年前に入社した人たちが本当に戦力になりました。泣き出した くなるぐらい複雑な群衆シーンを手を抜かずにやった。自分たちで見ても圧倒 されます」(朝日新聞7月20日朝刊)と語っていた。

 色の指定、色彩設計も一人の人がやっている。 保田道世さん(74)、『風の 谷のナウシカ』以来の担当者で2009年に退社したが、今度の作品でまた色彩 設計を担当した。 居てもらわなければ困る人、戦友だという。 「リアルさ」 よりも、「こう感じた!」が大切だという。 二郎の前に花嫁衣裳の菜穂子がや って来るシーン。 廊下を進む時と、二郎の前に現われたのと、着物の色が違 う。 抑え目の色から、華やかな色へ。 現実的な色ではなく、二郎の見た目 の気持、感動を意識した。 菜穂子は病気を押して、すごい決心をして、ここ に至った。 その全体も汲み取って、見られた側の菜穂子が感じたものまでふ くめて色を表現する。 宮崎監督とは50年、「どういう事がやりたいかがわか る」と言う。

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