志の春の「天災」
2015-03-10


 6日は、第560回の落語研究会だった。

「天災」      立川 志の春

「突落し」     桃月庵 白酒

「雁風呂」     柳家 小満ん

      仲入

「雛鍔」      林家 正蔵

「徂徠豆腐」    入船亭 扇辰

 「待ってました、志の春さーーん」と、黄色い声がかかった。 それも二三 人。 イェール大学卒で三井物産にいた志の春の転職事情は、当日記の「立川 志の春、三井物産を辞め、志の輔に入門<小人閑居日記 2014.5.26.>」を参 照のこと。 落語研究会は初登場、ドキドキだと言う。 最近要職にある方で 気の短い方がいて「日教組!」とヤジったりする。 今日のお客様も、年輩の 要職にあるような方々ばかりなので、私の噺がお気に召すかどうか…。

 離縁状を二本書いてもらいたい、と岩田のご隠居のところに、八五郎がやっ て来る。 二本? かみさんとババア。 あのババア、ウチにずっといるんだ。  とんでもないことをいう、産んでくれた親だろう。 とんだ濡れ衣だ、三年前 死んだ親父の連れ合いだ。 心学の先生に手紙を書いてやるから、話を聞いて きな、長谷川町三光新道の紅羅坊名丸先生だ、いい心持になる。

 まっぴらごめんねえ。 誰か、ピラピラ言っているな。 サムゲタンナムル ってのは、お前さんか。 日本人でございます。 耳でなく、腹で聞いて下さ い、耳は取次の下男下女という。 あなたはタンキだそうですな。 人間だよ。  喧嘩がお好きだそうで。 三度の飯より好きだ。 喧嘩はどちらも損するもの だ。 白黒をつけたいから、やるんだ。 気に入らぬ風もあろうに柳かな。 柳 をごらんなさい、風にさからわぬ、あのようにしなやかに生きていただきたい。  堪忍のなる堪忍は誰もする、ならぬ堪忍するが堪忍……、堪忍の袋を常に首に かけ、やぶれたら縫え、やぶれたら縫え。

 わかりやすい話をしましょう。 あなたが道を歩いていたら、小僧さんが水 を撒いていて、その水がかかった、粗相だけれど、どうなさる? 張り倒す、 店にねじこむ。 風の強い日に、屋根から瓦が落ちて来て、当ったらどうなさ る? その店にねじこんで、膏薬代をふんだくるね、空きだななら、誰か越し て来るまで待つ。 広い原の中、夕立ちにあって、全身濡れ鼠になったら、ど うなさる? 考えやがったな、この逆ボタル。 広い原の中だ、駆けこむ居酒 屋も、一本の木もない。 しょうがない、天から降った雨と思って、あきらめ る。 そう、小僧のかけた水も、落ちて来た瓦も、そこを通ったのを、天災と 思って、あきらめればいい。 みんな、天のせいにしちまえって、言うんだな、 俺が誰かをなぐっても、犬が下駄の片っぽをくわえていっても、天がくわえて いったと。

 オッカア、帰ったよ。 熊さんとこで大喧嘩があった、お光さんと、新しい 女が大喧嘩したんだ、お前さんがいなくて、よかったよ。 ちょっと行ってく る、天災を振り回してくる。 天水桶なんか、振り回すんじゃないよ。

 あなたに、言って聞かせましょう、耳でなく、へその穴で聞いてくれ、耳は 取次の次男次女という。 俺は、三男だ。 これは困りましたな、ここに手紙 がある、あなたはタンキだそうで。 タヌキじゃない、熊だ。 柳をごらんな さい、風が吹くと南へ南へとなびく、北から風が吹けば、どっかの居酒屋で一 杯やろうということになる。 神主のなる神主は誰もする、奈良の神主、駿河 の神主……、神主の袋をいつも首にかけ、やぶれたら縫え。 俺が縫うのか。  困りましたね、屋根から小僧が降ってきて、馬が降るとヒンヒンと鳴き、夕立 に小僧が水を撒く。 何を間抜けなことを言っているんだ。 なにごとも、天 災とあきらめろ。 なに、天災じゃねえ、先妻がどなりこんだんだ。

 志の春、かなり固くなっていて、爆笑とはいかなかった。 サムゲタンナム ルは、新機軸。

[落語]

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