福沢美和さんとピアニストの辻井伸行さん
2019-06-10


 福沢諭吉一族とピアノで、もう一つのエピソードがある。 福沢諭吉の曾孫 に福沢美和さんという方がおられた。 諭吉の長男一太郎の次男・八十吉の長 女として昭和2(1927)年に生まれ、平成27年11月9日に亡くなった。 母・ 淑子(よしこ)さんは旧姓緒方、平成2(1990)年4月の福澤諭吉協会の一日 史蹟見学会でご一緒して、駒込の高林寺に緒方洪庵の墓を訪れた時に、こちら も曾祖父と花を供えてお参りなさっていたのを憶えている。 その時も、盲導 犬アンナを連れていたが、もともと先天性網膜色素変性のため視力が弱く1970 年代初めの頃から全盲となり、1976年から暮らし始めた盲導犬フロックスとの ことを『フロックスは私の目―盲導犬と歩んだ十二年』(文春文庫)などの著書 に書き、視覚障碍者の福祉、盲導犬の啓蒙についての交流会や講演などいろい ろの活動をなさった。

 ピアニストの辻井伸行さんの母いつ子さんは、伸行さんが生れながらの全盲 と知って、自殺も考えたという。 だが福沢美和さんの『フロックスは私の目』 を読んで、力づけられて、美和さんに会いに行く。 そして、美和さんに「見 えない世界に生きる人には、その世界観がある。臆せずに個性を伸ばしなさい」 と言われたという。 保育園の頃に「目の見えない伸くん」とは呼ばれていた 伸行さんは、母子の努力で、その個性を伸ばすことによって「ピアノの上手な 伸くん」と呼ばれるようになった。 2009年6月、アメリカのヴァン・クライ バーン国際ピアノコンクールで、辻井伸行さんは最年少の21歳で優勝した。  本田有明さんの『あの人の人生を変えた運命の言葉100』(PHP文庫)にある 挿話である。

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