新生エクアドル国誕生の裏で
2022-04-27


 ゾウガメのジョージの身の上話は、いつしか南米の政治事情と絡み合う。 18世紀から19世紀にかけての、ここ20〜30年ほどの間に、ヨーロッパのナポレオンの騒乱が原因で、南米の支配国であるスペイン自体がぐらぐらしてきた。 これが南米の独立の機運に火をつけ、各地域にリーダーが現れた。 そのひとり、ボリバル将軍は、ひとつの大きな統一国家をつくろうという理想に燃えて、東奔西走していた。 ジョージには、ロドリゲスの正体がわかってきた。 ロドリゲスは、政治家たちとうまく付き合って、自分の商売に有利になることをいつも考えており、政治家も彼を頼りにしていたのだ。(つまり「ロドリゲス、おぬしも悪よのう」、エクアドルの越後屋だった。)

 ボリバル将軍には、スークレとフロリアンという二人の有能な部下がいた。 若いスークレはボリバル将軍と同じ理想に燃え、南米の民主的な統一国家をめざして奮闘していた。 フロリアンは策士で、強欲なタイプ、ロドリゲスはフロリアンに接近した。 南米各地域の足並みが揃わず、ペルーやボリビアが独立、統一国家の夢が果たせなくなったボリバル将軍は、若きスークレにあとを託し、せめてエクアドルだけでも理想的な民主国家にしてほしいと頼む。 スークレは優秀な軍人で、スペイン軍との各地の戦いで戦果を上げ、昨1830年5月、スークレが大統領となって、新生エクアドル国が誕生した。 ところが、その翌月、何者かによってスークレ大統領が暗殺され、9月、フロリアンが大統領になった。 ジョージは、スークレ暗殺事件の裏には、ロドリゲスがからんでいると睨んでいた。 地元の有力者たちが、しばしばロドリゲスの館で密談を重ねているのを、目撃していたからだ。

ジョージは、ロドリゲスの館を逃げ出し、数週間歩き通して、深いジャングルの中にいることを確認して、自由の身となったことに気づく。

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