地形知り、豪雨から身を守る「流域思考」
2022-05-27


 5月16日に、5月8日の三田あるこう会で、町田薬師池公園周辺を散策したことを書いて、「鶴見川に沿って歩き、最後の坂を上がって農家料理「高宮」にたどり着いた時には、相当へろへろになっていた。」と書き、(鶴見川については、流域を研究している岸由二慶應義塾大学教授の話を聴いて、「流域」からの豪雨水害防災・減災<小人閑居日記 2012. 11. 22.>を書いていた。)と付記した。

 その岸由二(ゆうじ)さんが現在、われわれが歩いた東京都町田市の鶴見川「源流域」にお住まいだということがわかった。 2021年9月29日の朝日新聞夕刊の、「地形知り、豪雨から身を守る「流域思考」 岸由二・慶応大名誉教授が新刊」という記事を切り抜いて、持っていたからだった。

 気候変動で豪雨が増える時代を見据え、災害から身を守るために自分が暮らす「流域」をよく知る必要があると説く岸由二さんは、2021年夏、『生きのびるための流域思考』(ちくまプリマー新書)を出版した。 2013年の『「流域地図の作り方」』、2016年の『「奇跡の自然」の守りかた』(柳瀬博一さんとの共著)に続く「三部作」だ。

 1冊目では近所の川を源流から河口まで歩き、水が集まる大地の連なりを体感しながら自分なりの地図をつくろうと子どもたちに呼びかけた。 2冊目の共著は、そうした流域の豊かな生態系を丸ごと保全した小網代の森を紹介した。 3冊目は、すべての活動の原点である故郷・鶴見川の水防災の話を書いた。 岸由二さんは、横浜市の鶴見川河口の町で子ども時代を過ごし、ひたすら川で遊び、戦後の鶴見川の氾濫はすべて自宅で体験したという。

 東日本大震災の翌年の2012年秋に日吉キャンパス公開講座「日本ってなんだろう―東北の魅力再発見」で、岸由二経済学部教授の「流域で考える・東日本大震災からの復興」を聴いた。 そして、こう書いていた。

「全ての土地は、雨水を集める小さな川、それが集まって出来る大きな川の「流域」にある。 「流域」とは、降った雨が川に集まる大地の広がり=洪水や自然生態系の単位だ。 日本は「流域」の国だ。 暮しも、防災も、環境保全も、「流域」で工夫する必要がある。 小網代の森は浦の川の「流域」だし、ここ日吉は鶴見川の「流域」だ。 NPO法人鶴見川流域ネットワーキングという活動を続けてきた。 かつて鶴見川下流は水害の常襲地帯だった。 1980年から国を中心とした総合的な治水対策が実施された。 丘陵地を開発しない、源流に保水の森を保全、下流は川幅を広げる河川改修、4,300の調節池に300万トンを貯留(慶應日吉も200トンの水、ビオトープに)、新横浜に巨大な多目的遊水地(スポーツ公園、港北ニュータウン開発)。 それによって、1982年以降、水害はない。 行政と市民団体のつながりが大事だ。 「流域」思考が、川を、都市を、地球を再生する。」

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