連日、暑い日でございます。 山に行って避暑、涼むかという方もおいででしょうが、昔はおいそれとは、山に登れなかった。 信心で登った。 山自体が、神様で、いろいろ仕来りがある。 水垢離を取る、向う両国の垢離場などで。 大天狗、小天狗てなことを言って、水垢離を取る。 念仏を唱える。 ナマンダブ、ナマンダブ! 山へ登るのには、(歌うように)♪ナーーーッ、マーーーッ、ダーーーッ、ブーーーッ(拍手)! 落語より、この方が受けて……、最近気にしている。
今年も、お山しようよ。 何で、あんなことをするんだ。 あとで、面白いことがあるんだ。 藤沢あたりで、いい女郎屋がある、去年は二日もいた。 行く、行く。
きっと誰かが、酒飲んで暴れる。 先達さんに迷惑をかけるから、決め式をこしらえよう。 文句言ったら、二分。 暴れたら、髷(まげ)を落として、坊主にする。
講中18人、お山は無事に済んだ。 藤沢宿に下りてきた。 酒を飲んで、喧嘩。 先達さん、帳面など付けてるんじゃない。 熊が、湯殿で暴れている。 腹立てたから、二分出す。 貞も二分、二人で一両出す。 俺たちが湯に入っていると、ぐでんぐでんになった熊が、大きな尻で割り込んできた。 そして、一発放したんだ、俺の鼻先で。 文句を言ったら、屁は俺が捨てたもんだ。 それを、只で吸いやがって、だから仕事が拙いんだと言いやがった。 貞は、頭を二度蹴られた。 頭を蹴るなと言ったら、帳場に預けろ、と。 取り外しが出来ないと、小桶を投げつけると、その小桶を壊して、八つ殴られた。 貞と二人で、熊を坊主にするから。 この通り、頭を下げるから、騒ぎにしないでくれ。 お膳が並んで、宴会となる。 芸者の唄と踊りで盛り上がった。
剃刀借りて来たよ。 どうせ野郎、寝てるから。 枕元に徳利がある、あれで湿せばいい。 美味いねえ、いい酒だ。 プッ、プーーッ! よく切れる剃刀だ、正宗じゃねえか、剃れる、剃れる。 蚊帳をかぶせておこう。 頭だけ、出しておけば、蚊に食われる、血を吸われりゃあ、少しはやさしくなるだろう。
朝、一つ隠して、17人のお膳。 出立となる。 また、来年もお出で下さい。 江戸へ歩いて帰る。 二階の掃除を。 おかみさん、蚊帳からお坊さんが出て来ました。 坊主めくりじゃないんだから。 この人、昨夜、湯殿で暴れた人です、肩に瓢箪の彫り物がある。 お坊さん、起きて下さい。 アーーア、今日はいい天気だな。 煙草盆をくれ。 何、笑っているんだ。 さっぱりしましたね、涼しくていいでしょう。 お坊さんがいます。 どこに? あなたが…。 (頭に手をやり)誰の頭だ。 昨夜、俺、暴れたか? やっちゃった、ぜんぜん覚えていない。 みんなは? もう、お立ちになりました。 握り飯に、酒を一本、駕籠を江戸まで、頼んでくれ。
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