桂吉坊の「冬の遊び」前半
2025-08-02


 上方落語の珍品担当、「冬の遊び」で夏の噺です。 あらかじめネタ出しをしていると、当日、後悔をすることがある。 大坂の新町、官許の廓が三つ、江戸の吉原、京都の島原と。 吉原は花魁、島原、新町は太夫と呼ぶ、傾城、傾国といわれる高級な遊女がいた。 吉原に花魁道中があるように、新町でも道中をした。 元来春のものだが、時代で、時期がばらばらだった。 大師匠の米朝は、お上をしくじったからだろう、と言っていた。 新町は、前の万博の頃までは、よかったという。 新幹線が出来て、客が大阪で泊まらなくなった。 かつては、贅沢な遊びをした。 廓で散髪屋を呼ぶ、隣の部屋に、浄瑠璃語りを入れ、それをBGMに散髪をする。 旦さん二人で、将棋を差す。 駒の一つ一つに、芸妓舞妓の着物を作って、それを着せて、広い部屋で遊ぶ。 廊下に、田圃をつくって、芸妓舞妓に田植えをさせる。 そんな豪勢な遊びをした(と、羽織を脱ぐ)。

 西区、新町(といっても、土地勘がないでしょうが)、スポンサーは堂島、米相場所があり、日本中の米の値段を決める。 その堂島の直(ジキ)、旦那衆が四、五人、新町にやって来る。 新町では、芸妓舞妓が仮装で歌舞伎や能のキャラクターに着飾って道中、表座敷の格子を外し、客席を設けている(鳴り物が入る)。 旦さん! おう、一八か、後から来いよ。 吉田屋へ。

 よう、お越しで。 暑いことだな。 奥の座敷、松の間へ、下は籐むしろ、すだれを下げ、庭には打ち水、馴染の芸妓が来る。 雀の照り焼きができる暑さで。 栴檀(せんだん)を、呼んでくれるか。 栴檀さん、道中でっせ。 知盛の衣装で。 取り敢えず、栴檀、呼んでくれ。 道中が始まる時分で。 かめへん、呼んでくれ。 できしません。 そうか、帰るさかい。 お富さん、姐さん、旦那さんが、無理を言うて、お帰りになるって。(と、泣く) お仲、わてが連れて来ます。

 お奉行様、役人さんもいらっしゃる道中。 吉田屋のお富が、栴檀を連れてくる、と走る。 道中の行列がやってくる。 こんな別嬪揃い、見たことない。 屋台を引っ張っている。 三味線、鼓、笛は若い連中、世話方の引舟、ベテラン勢が続く。 太夫の行列、傘止、栴檀太夫。 通して、おくれやす! 拳固で、見物にぶつかる。 お富は、行列を止めて、新町の一大事です! 柝が入った。 幇間連中が、行列を止めた。

 世話役たちに、堂島に挨拶に行きましたか? 行ってない、誰も。 すまん。 新町が、潰れる。 栴檀さんを、貸して下さい。 役人たちは、茶屋に放り込んで、芸者が固める。 若い連中が、栴檀太夫を囲んで行く。 直(ジキ)、栴檀さんをお連れいたしました。

[落語]

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