五街道雲助の宇野信夫作「初霜」前半
2026-01-23


 今晩のお掃除役で…。 ここへ来て冷え込んで参りました。 昔の方が寒かった、人形町の末広なんか、楽屋に火鉢、ささやかな炭。 それが下手(しもて)で、上手のお囃子は手あぶりの火鉢、これっきり。 前座はジーパン穿いたまま、着物を着ていた。 ガラス戸が開くたびに、風が高座を吹き抜ける。 さらに暖簾を吹き抜ける。 寒さしのぎに、立ち上がって踊って、席亭に怒られた。

 ♪あんまり情けなや、今宵離れて……。 チョン、チョン! チョン、チョン! ♪まめで急ぐは……。 チョン、チョン!(植木屋の一人が鼻歌を唄いながら、枝を切っている) おい、留ちゃん、唄ってるのか、仕事をしているのか。 その、両方だよ、それが出来るんだ、気持のいい仕事は、鼻歌一つ唄いながら、やる。 麹町のお屋敷で、松一本坊主にしただろう。 その枝、どうするんだよ。 アッ、飛ばしちまいやがった。 平ちゃん、任しといてくれよ。 鋏を使うと、唄が出てくる。 お前、そこに立ってて、四ツ目垣は出来たのかい。 足が本当なら、お前に松の手入れなんてさせないんだ。 留ちゃん、降りて来な。 梯子を、取るな。

 平さん、何をしているんだい。 女将さん、あんなドジな野郎はいない、調子っ外れの唄って。 お掛けなさいよ。 どうだい、足の具合は。 ご難続きでしてね、倅は持って行かれる、木から落ちる、とんでもない災難が起きる。 倅は一昨年亡くなって、金を一両、ご主人から頂いた。 美味しいものでも食べて下さいって。 その小判は、形見だから、胴巻きに入れてたのに、どっかに失くしたんで。 いろいろ探したけれど、見つからない。 長屋中回って、大家にも聞いたが、出てこない。 それで、留さんに当ってたのかい。 先代からの出入りだ、仲良くして下さいよ。 お神酒徳利って言われてて、同じ年にかみさんをもらって、どちらも先立たれ、あいつに娘、うちには倅が残った。 あいつの娘は、深川の米屋に嫁に行って、長屋に入って、留は米を廻してもらう、つい、癪に障る。 なのに、うちの倅は、一昨年亡くなった。

[落語]

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