ナショナリズムとパトリオティズム
2006-02-04


 講演と離れるが、藤原正彦さんの『国家の品格』の中で重要だと思ったのが、 日本であまりよいイメージで語られない「愛国心」という言葉には、二種類の 考えが流れ込んでいる(二つの側面がある)という指摘だった。 藤原さんは、 英語のナショナリズムとパトリオティズムは別だと言い、ナショナリズムを「国 益主義」、パトリオティズムを「祖国愛」と訳す。 そして、ナショナリズムと は、他国のことはどうでもいいから、自国の国益のみを追求するという、あさ ましい思想で、戦争につながりやすい考え方だとする。 パトリオティズムと は、自国の文化、伝統、情緒、自然、そういったものをこよなく愛することだ とする。 そして藤原さんの主張する「祖国愛」は、英語のパトリオティズム に近い、という。

 普通、ナショナリズムは「民族主義、国家主義」、パトリオティズムは「愛国 心」と訳される。 パトリオットは「愛国者、志士、憂国の士」、私などは語感 として、こちらの方が戦争につながりやすいと思っていた。

藤原さんは、ナショナリズムとパトリオティズムの二つを峻別しなかったた めに、戦後はGHQの旗振りのもと、「愛国心」が戦争の元凶として二つもろと もに、捨てられてしまったという。 そして日本が現在、直面する苦境の多く は、「祖国愛」の欠如に起因すると言っても過言ではない、という。

[文化]
[日本]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット