1日、藤原正彦さんの講演の「まとめ」で、「創造」するための一要素として の「情緒」力を、鋭敏な感受性、優れた触覚、アンテナが大事だと書いた。 藤 原さんは、奈良女子大の数学の教授で、文化勲章を受けた岡潔さんの話をした (『国家の品格』の140頁にも出てくる)。 岡潔さん(1901-1978)は、28,9歳 でフランスに3年間留学、帰国した時、留学して二つのことが分かったと言っ た。 一つは、これから進むべき研究の分野。 もう一つは、蕉門の俳諧を調 べなければならないこと。 そしてまず蕉門(芭蕉に始まる一派)の研究に一生 懸命励んだ。 数学の独創には「情緒」が必要と考えたのだという。 その後、 やおら数学の研究にとりかかり、20年ほどかけて、当時、その分野で世界の三 大難問といわれていたものを、独力で解く快挙を成し遂げた。 毎日、数学の 研究を始める前に、一時間、お経を唱えていたという。
岡潔さんは、「先生のおっしゃる情緒というのは何ですか」と訊かれ、「野に 咲く一輪のスミレを美しいと思う心」と答えたそうだ。 藤原正彦さんは、数 学は高い山の頂にある美しい花を取りに行くようなものだ。 美に対する感動 が強くないといけない。 数学をやる上で美的感覚、美的感受性は最も重要な 資質だという。
そして、藤原さんは日本のあらゆる学芸の内で、もっとも優れているのは、 文学だという。 万葉集に始まり、紫式部、芭蕉、西鶴、近松と、世界に冠た る文学を作り上げてきた。 その次が、数学だといい、江戸期の関孝和、建部 賢弘(たけべかたひろ)の名を挙げた。 文学と数学が特に凄いのは、日本人の 美的情緒がとりわけ秀でているからだというのだが、この話、もう一つ納得の いかないところがある。
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