志の輔は、一年に二度、落語研究会に出るようになって五年になる、という。 そして年に一度やっているのが、昇太と二人で行く海外旅行、最近もラス・ベ ガスに出かけた。 ロスでの乗り換え、審査の書類がむずかしくて、昇太だけ が引っかかった。 泊まるホテルか何かの書き直しを求められて、不満が顔に 出た。 その顔が、許可されない。 そういうことを承諾するから、日本は負 けた、なんて昇太がわからないことを言っている。 ともかくラス・ベガスの ホテルに着いた。 チェック・インをして、客室までの間に、カジノがある。 つまりカジノを通らなければ、部屋に行けない。 昇太がマシンに20弗札を 吸い込まて、ボタンを押すと、いきなりジャラジャラ出て来た。 ジャラジャ ラジャラジャラ、どんどん出て来る。 両替のボタンを押したのだった。 10 セントコインの箱を抱えて歩くことになる。 志の輔が一度やってみたかった 噛み煙草を買って、嗅ぎ煙草だったドタバタがあり、旅の恥は掻き捨て、旅に 出ると心のゆるみが出る、というところで「お泊りさんでは、ございませんか」 と「宿屋の仇討」になった。
「宿屋の仇討」、そこそこに聴かせたのだが、侍が番頭の伊八に繰り返し聞か せる例の「昨晩は大久保加賀守様の御城下、○○屋という間狭な宿に泊まりし 所、…」のセリフに、難点があった。 ちょっと照れくさいのか、滑舌の問題 か、早口で、口ごもる感じになる。 聴き取りづらいのだ。 手を叩いて伊八 を呼ぶ、このリフレインを、伊八も当夜の観客も憶えてしまうところが、この 噺の面白さの一つだけに、残念な気がした。
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