1964年3月に文学部フランス文学専攻を卒業した鷲見洋一さんは、フランス のモンペリエ大学に留学し1972年3月に博士号を得ている。 恩師はジャッ ク・プルースト、『百科全書』の専門家で、欧日比較文化史も研究した人、一昨 年亡くなっている。
鷲見さんの語った『百科全書』の特色の続き。 まず「本文の世界」。 『百 科全書』は、(1)人間知識の体系を詳述している。 知性を記憶力、理性、想 像力に分ける。 記憶力は歴史(聖史、古代および近代の世俗史、自然史)。 自 然史には、自然の一定不変性と変異、自然の利用(技術・手職・手工業生産) が含まれる。 理性は哲学(一般形而上学・神についての学問、人間について の学問(精神論、論理学、倫理学)、自然についての学問(一般物理学、数学、 特殊物理学(動物学・気象学・宇宙学・植物学・鉱物学・化学))。 想像力は 詩(ポエジー)。 詩には音楽、絵画、彫刻、建築、劇詩などが含まれる。 (2)参照の技術。 項目の見出し語の次に「分類符号」がついている。 「参 照項目」で、知識の体系への参照と、校閲逃れをやった。 つまりタイトル項 目だけでは信用できず、参照項目を全部読まないと、本音がわからない。 こ れをプルースト先生は「真のポリフォニー」、対話の精神と言ったそうだ。 本 文の短い解説に不満な編集長ディドロが*を付けて介入し、長々と追加の説明 を書いていたりする。
「図版の世界」。 (1)奢侈志向。(ブルジョワジーが中心になってつくっ たので) (2)「断面」へのこだわり。 中を覗かせてくれる(解剖学など)。 (3)見てはならないもの。(「補遺」に両性具有者の図) (4)隠蔽と顕示。 (ピン製造工場では幼児の労働…子供への同情などない。ガラス製造工場、過 酷な作業の手順のみ淡々と描く) (5)いたずら。 プルースト先生の発見 によると、造船工場に、画家とそのスケッチを見ている人(つまり作者が登場 し、読者と対話している)や、こちらに手を振る少年が描き込まれている。 そ れは我々に図版に入っていらっしゃいと合図しているのだ。 ここで鷲見さん は、フランソワ・トリフォーの映画『大人は判ってくれない』のラストシーン を見せた。 少年院から脱走し、波打ち際まで追いつめられた少年は、(1)捕 まる(2)海に入る、かの選択を迫られ、(3)われわれを見ながら、こちらに向かって来る。 トリフォーはカメラで、少年を「こっちの世界」へ救い上げ る、と鷲見さん。 FINが出て、講演も終わった。
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