左龍の「粗忽長屋」
2008-04-02


柳亭左龍は、おでこがほとんどない、ぐしゃっとした濃い顔、誰かに似てい ると思っていた。 笑うと、かわいい。 それで、出目金か、ブルドック似だ と、わかった。 さん喬の弟子だそうで、噺家は変わった人(人を方と言った が)の集団だという。 たとえば、さん喬の六番弟子のさん弥(前は、さん角? といっていた)は、世間では普通に仕事ができない人。 師匠のおかみさんの お父さんが亡くなって、お焼香の時、親戚の皆さんが笑いをかみ殺している。  さん弥は、火のついたほうを、三回持ち上げた。

「粗忽長屋」は、ご存知「行き倒れ」がわからない男と、その兄弟分の熊の 噺。 まめで、そそっかしい男が、浅草の観音様へお参りに行くと、仁王門の ところに、人垣ができている。 何かやるんだろうと、股倉をくぐって前へ出 ると、「いき倒れ」だという。 「死に倒れ」じゃないか、熊の野郎だ、出掛け に会ってきたばかりなのに、当人を連れてきましょう、となる。 長屋に戻っ て、「わーぁ熊公」と、空き店(だな)を叩くあたりが、左龍独特のやかましさ。  熊、お前、浅草で死んでる。 今さら、きまり悪いという熊を連れて、当人が 出てくりゃあ、文句は言えないだろうと、浅草に戻る。 このナンセンスを、 左龍は熱っぽく演じて、けっこう聴かせた。 その柄が、変わった人に合うの かも知れない。

[落語]

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