ことしは国民読書年で、27日からは、読書週間でもある。 「読んでますか!」 とアントニオ猪木が叫んで、かたっぱしから本を読んでいるCMはどうだろう。 AC・公共広告機構が、つくらないか。
1992年2月、毎日新聞の編集局長だった斉藤明さんは、丸谷才一さんに電話 をかけ、「書評欄を刷新します。全部お任せします」と言ったという。 4月か ら「今週の本棚」が始まった。 だからかどうか知らないが、斉藤明さんは、 社長、会長になり、今(2006年)は相談役だそうだ。 丸谷さんは「方針」を 示した。 その内の「書き方についての要望」から三つ、「話を常に具体的にし て、挿話、逸話を紹介したり、ときには文章を引用したりしながら書いて下さ い」「受け売りのできる書評を書いて下さい。『ああ、あの本はね』と勤め先で しゃべる、バーでしゃべる、その材料となるような」「最初の三行で読む気にさ せる書評をお書き下さい。現在までの大新聞の書評は一般に、最初の三行でい やになります」。
丸谷才一さんの『蝶々は誰からの手紙』(マガジンハウス)という書評集の、 序論のような章にある話だ。 脱線するが、この題、蝶を手紙に見立てるのは 三好達治的な俳諧趣味、古典は古人からの手紙だと、たしか吉田健一が書いて いたという。
丸谷さんは言う「本というものは情報の容器としてじつに便利なもので、現 代社会についての大切な情報は新刊書という形に整理されて、われわれのとこ ろに送り届けられる。しかしそれを全部受容することは不可能だ。そこで程度 の高い案内者が上手にまとめて要約してくれる。それがイギリスの書評のあり 方なんです。同じことを日本でやれば、よりすぐられた情報が、質の高い形で 日本のふつうの読者に提供される。それによって精神が豊かになり、世界が広 くなってゆく――そういうことを考えて、ぼくはやっています。」
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