小駒の「持参金」
2012-04-30


 24日は、第526回の落語研究会だった。

「持参金」       金原亭 小駒

「疝気の虫」      春風亭 百栄

「人形買い」      柳家 三三

       仲入

「奈良名所」      柳家 小満ん

「井戸の茶碗」     立川 志の輔

 金原亭小駒、伯楽の弟子だそうだ。 かつて禁演落語というものがあった、 と始める。 戦時中、時局にふさわしくない噺を禁演にした。 でも飲む、打 つ、買うを扱う落語に、時局にふさわしい噺があるのだろうか。 今、禁演落 語はあるのか。 状況によっては、ある。 つまらない噺、公共の電波に乗せ られない噺、学校寄席では出来ない噺。 ある演芸場では、聞けない噺がある。  席亭のお達しだ。 女性の顔の造作に関する噺である。 女性のお客様は皆さ ん、自分以外の誰かの噺だと思うのだけれど…。

 八五郎の所に、伊勢屋の番頭が来て、以前貸した十両を返してほしいという。  お前のお父っつあんに世話になったから、貸したのだが、お金のいることが出 来て、思い出した。 来月、再来月、半年先ならと答えると、4、5日内でない と困るのだ、と頭を下げた。 八五郎に金の当てはない。

 八五郎の所に、ご隠居が来て、おかみさんをもらったらどうだという。 知 り合いの娘さんで、20いくつか、はっきりと言われて、23だったかな、背イ はすらりと低い、立ってもかわりがない、色は透き通るように黒い、浅黒い、 体つきはきりりと太っている、少し太っている位が柔らかみがあっていい、心 根がやさしい。 家事は半人前だが、食べるのは三人前、腕力が強い、酒はい くらでも付き合う。 ただ、傷が一つだけある。 おめでただ。 産み月で、 明日にでも飛び出そうという。 八五郎が、冗談じゃない、いりませんと言う と、ご隠居は帰りがけに、持参金に十両つける、ともらす。 下さいよ。 今 すぐでないと、来月はいらない。 今日は、日がいいから、夕方連れて来ると いう。  ご隠居が娘を連れてやってきて、仲人は宵の口と帰ろうとする。 持参金は、 ちょいと足りないことがあって、明日朝持って来るからと…。

 八五郎が祝いに一杯やって、伊勢屋の番頭と会う。 都合がついたか。 出 来ました。 番頭の言うのには、実は隣町に店を持たせてもらうことになって、 お得意さんも祝ってくれ、十月(とつき)前、飲み過ぎた。 店に帰って具合 が悪くなったのを、女中奉公しているオナベが介抱してくれ、よく面倒をみて くれたので、つい、ということになった。 オナベの腹が大きくなって、ご隠 居に相談した。 ご隠居の話だと、持参金に十両つければ、オナベをもらって くれる間抜け野郎が、昨日見つかった。

 あのご隠居さんですか、いい人だ。 実は、ゆんべ、かみさんをもらった。  私のとは、別口だろう。 おそらく、本口だ、番頭さんの子とわかったら、あ っしもいい。 そうすると、持参金の十両は……。 金は天下の回り物だ。

 「持参金」、聞く機会が少ないが、モーパッサンかチエホフの短篇を思わせる。  それにしても、八五郎は好人物である。

[落語]

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