さまざまな障壁と闘って
2013-04-22


 朝日新聞は、3月18日の社説で、「予防医療 多様な試みを生かそう」と題 して、「ケアプロ」川添高志さんの試みを紹介した。 新聞の社説が、一小企業 の仕事をくわしく紹介するのは、きわめて異例のことだ。 よく書いてくれた、 と思う。 社説には、こうある。 「住民の健康維持を旨とする地域の医師会 とは、おおむね良好な関係という。/だが、一部の自治体では「医療法や薬事 法などに違反する疑いがある」としてサービスを封じられている。/ケアプロ 側は、本人が自己検査して数値を計測する場を提供しているだけで、診断も医 療行為もしていない、との立場だ。/同社は奈良県や栃木県足利市などからイ ベントに招かれた実績がある。そうした自治体は、違法ではないと判断してい る。/ケアプロ以外でも薬局などで指先採血による健診を提供してきた例もあ る。厚労省は「自治体が個別具体的に判断する必要がある」という。/だが、 全く同じことが、場所によってできたり、できなかったりという状態は奇妙だ。 確かに、衛生管理や個人情報保護などの課題があろう。きちっとルールづくり をしたらどうか。/自民、公明、民主の3党が合意した社会保障改革で「疾病 の予防及び早期発見」は重要な柱である。様々な主体が力を合わせていくこと が必要だ。」

 川添高志さんの仕事には、ちょっと考えただけでも、さまざまな障壁が立ち はだかっていることが想像できる。 厚生労働省、地方自治体の監督や規制、 医師会を始めとする、さまざまな既得権を持つステークホルダーとの利害関係 の調整が欠かせない。 どれもが、前例踏襲を大切にする頭の固い組織である ように思う。 川添さんの話では、イオンと提携して始めたスーパー内の健診 は保健所からクレームがついて撤退を余儀なくされたし、駅ナカのケアプロ東 急横浜駅店は保健所に血液検査だけは止めてくれと言われた、という。 何度 も足を運んで、市町村長に頭を下げ、味方を増やしていくほかない。 現在、 奈良県や川崎市など10自治体と良好な関係が築けたそうだ。

 検査実績があるのは、スーパー、JR駅ナカ、フィットネスクラブ、スーパー 銭湯、自治体のイベント、社員食堂、商店街など。 病気を発見すると、医師 に紹介することで、立場が逆転出来るから、薬局(ドラッグストア)ルートは 有望で、開拓を進めている。 さらにインドなど(看護師の人件費が安い)、海 外展開も検討中だ。

 東日本大震災の被災地へ医療ボランティアに出かけ、在宅医療の不足による 孤独死の問題に直面して、在宅健診のニーズが浮き彫りになった。 そこで 2012年3月から、訪問看護ステーションを立ち上げ、24時間・365日対応の 真心のケア事業も始めた。

 ケアプロは、美容院に行くような感覚で、気軽に定期的に健康サイクルを回 して、生活習慣病を予防する新しいスタイルを提案している。 一人ひとりが、 予防の必要性を「考え」、定期的に「検査」し、健康状態に「気づき」、食事・ 運動・受診などの「行動」を起こす健康サイクルだ。 健康に気づくきっかけ となること。 それによって、わが国の医療費削減にも貢献していくことを目 指す。 「儲かるか、制度に触れないかでなく、本当に社会に必要か?」が、 問われていると、川添高志さんは述べた。

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