「ワンコイン健診」の川添高志さん
2013-04-21


 同期の仲間の情報交流会で、若い経営者で医療の世界に挑戦している後輩の 話を聴く機会があった。 500円から手軽にできる「ワンコイン健診」を提供 している「ケアプロ」社長の川添高志さん、30歳である。 川添さんは、小学 校時代にレスリングで全国制覇をしたことがあるそうだが、父親がリストラに 遭ったことから、高校時代には自分で起業する道に進もうと志した。 そして アルバイトや身内の病気で経験して、日本の医療現場の実情や経営方法に疑問 を感じていたところに、2001年慶應義塾大学がSFC(湘南藤沢キャンパス) に看護医療学部を開設、「21世紀のヘルスケアの先導者を育成する」というビ ジョンと、1年目から医療経営や医療政策が学べることを知り、入学する。 学 生時代から将来の起業を目指した準備を行い、2005年に卒業、経営コンサルテ ィング会社、東京大学病院勤務を経て、2007年、ケアプロ株式会社を起業した。

 看護師として勤務した東大病院で見た、足を切断しなければならなくなった 糖尿病患者の「早く、健診を受けてさえいれば」という嘆きには、強烈な印象 を受けた。 日本の医療費は年間40兆円、毎年1兆円ずつ増える。 糖尿病 など生活習慣病を防ぐため、2008年度から始まったメタボ健診(特定健診)は 伸び悩み、2011年度の受診率は45%、3千万人近くが受けていない。 時間が 取れない、保険証を持っていない、健康診断費が高い、などという理由で、健 診を受けられない人々が、「ちょっと立ち寄り、ちゃんと健康」になるのを、応 援する方法はないか。 川添さんは、アメリカ・ミネソタ州の素晴らしいメイ ヨー・クリニックでの経験も踏まえて、すでに糖尿病患者は実際に行っている 自己採血の方法を使って、「いつでも」「誰でも」「早い」「手頃な価格」「安心」 の「ワンコイン健診」を考え出す。

 自己採血は、まず手首から指先へマッサージして、指先を消毒する。 そこ に採血器具(使い捨てで衛生的)を押し当て、ボタンを押すと「パチッ」と音 がして、針が瞬時に出る。 指先に向け、血液を押し出すように絞り出し、検 査試薬(これも使い捨て)で、吸い取る。 その過程は、看護師がしっかりサ ポートする。

 基本メニューは、血糖値(糖尿病の検査)、総コレステロール(動脈硬化の検 査)、中性脂肪(同前)、身長・体重・BMI・骨密度・血圧、肺年齢測定(COPD の検査)、ドライアイが、それぞれ500円、ヘモグロビンAlc(糖尿病の検査) が1,000円である。 受診者の平均単価は、1,500円だそうだ。 この方法で、 がんの健診、早期発見が出来る日が待たれるではないか。 多少、費用はかか っても。

 たった一人で始めた。 起業応援のいくつかの支援を受け、4年間苦戦しな がらも、去年から黒字を出し、常勤社員は20人になった。 中野ブロードウ ェイの4坪の店(パチンコの景品交換所だった)で始め、スーパーやパチンコ 店に年間・千回以上の出張で、これまでのべ14万人にサービスを提供した。  3割で検査値が「要受診」や「要注意」だった。 これをきっかけに医師の診 察を受け、病気の早期発見につながれば、メリットは大きい。 糖尿病が重度 化し、人工透析が必要になれば、年間400万〜600万円はかかる。 病気の予 防と早期発展は、医療費の抑制につながる。

 「革新的なヘルスケアサービスを提供して、健康的な社会づくりに貢献する」 が、その企業理念だ。 お名前の通り「高い志」を持ち、社会的使命を感じて、 挑戦を続ける川添高志さんの話に、40歳以上年上の仲間たちは、感動し、元気 をもらい、応援したいと思ったのだった。

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