「老後も独立自尊」のすすめ
2017-12-27


   「老後も独立自尊」のすすめ<等々力短信 第1046号 2013.4.25.>

 高校時代の同級生で、「豊かな最晩年」のための老人病院をやっている大塚宣 夫さんが、『人生の最期は自分で決める』(ダイヤモンド社)という本を書いた。  青梅慶友病院は開院から33年、よみうりランド慶友病院は8年になるという。  そのサービスぶりが、入院者やその家族を始め、世間一般にすこぶる評判がよ く、同種の施設としては最高のものをつくりあげることに成功した。 将来は ぜひお世話になりたいと思うのだが、会長が同い年だから、どちらが先に適齢 期になるかわからないのと、相当の費用がかかるという難点があった。 経費 は、この本で公開し、解決案も示唆している。

 75歳過ぎあたりから、体や精神機能の衰えが目立つようになる。 転倒や転 落、病気をきっかけに、あれよあれよという間に寝たきりや認知症になる。 大 部分の人が、長生きの末には、家族の世話を受けて辛酸をなめさせ、さらには 絶対受けたくない惨めな、苦しいかたちで延命させられた挙句、ようやく人生 を閉じる。 そうならないよう、大塚さんは、自分の老後、とくに最終段階の 2〜3年間を豊かにするために、成り行き任せ、他人任せにせず、逆算して今日 から準備を始めればいいと、説くのだ。

 まず、家庭内や身近なところで役立つ存在になるのが、最も現実的でより近 道だという。 三度のメシだけは自分で手配出来る「留守番男」をめざすこと から始め、やがて掃除、洗濯、家事全般の出来る「自活男」「主夫」へと変身す れば、重宝がられる。 周辺にも、孫の世話を始め、町内の学童の見守りなど、 役立ちの道はある。 その延長線上で、一人暮らしは、大いに結構、絶えざる 緊張を強いられ、自分で動かなければ一日がすぎない環境は、老化防止、ひい ては認知症の進行を防ぐ特効薬だ。 さらに「自分の持てるものを総動員して 自活し、ある日、誰に迷惑をかけることもなく静かに逝く」孤独死が、最後ま で極力他人に頼らない生き方として、社会的にもっともっと高く評価されるべ きだと、大塚さんは勇気ある発言をする。 独立自尊の老後のすすめだ。

 介護保険も医療保険も、あと十年は持たないだろう。 国も、ここ数年で、 現在の在宅介護中心の方針を変更せざるを得ず、残された道は、利用者の負担 を大幅に増やしたかたちでの在宅介護か、施設介護かだという。 最後の頼み の綱は、やはり自分の力で、体力や気力、権力が衰えた時にもまだ残っている ものといえば、今まで築いてきた知恵と財力ということになる。 大塚さんは、 国にも次世代にも面倒をみてもらわないことを前提に将来を考えて、「老後の沙 汰こそ金次第」、自分のつくった財産のすべては自分で使って、自分の人生を幸 せに生き切ることを提案する。 人生こそ、終わり良ければすべて良し。 そ のためには、どこの施設が最適か、答は明白である。

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