トリの扇遊は黒紋付、火事と喧嘩は江戸の華、漱石門下の寺田寅彦は、災害は忘れた頃にやってくるという名言を残したが、火消の働きをおろそかにしちゃあいけない、とおっしゃった偉い先生で、と始めた。 江戸は、木造、長屋、木と紙で出来ているから、寝煙草などで、千軒万軒焼いてしまう。 享保3年、大岡越前守が町火消の制度をつくった。 町火消は、いろは四十八組というけれど、へ組、ひ組、ら組、ん組がなくて、代りに百・千・万・本という組を入れて四十八組。 大名火消は、加賀鳶が芝居にある。 定火消は、幕府、公儀が、五千石以上の旗本でつくり、定火消組の同心の下に、「臥煙」という火消人足がいた。 寝ている部屋では、丸太に頭をつけて寝る。 火事が起こると、掛矢や木口の親方で、引っ叩く。 半鐘を打つ、二つ番から五つ番まで、「ジャンジャン」は遠い、三つは三丁以上五丁以下、四つ番は突風に、五つ番は千代田の城の側に出ると打つ、四十八本、みんな出た。 神田よ組、本丸火消、城内に入って消す。 ごく近いのは擦り番、掻き回す。 消え番、火の消えた合図で、間を置いて打つ、「ジャン、ジャン・・・・・・ジャン、ジャン」。
おっかさん、徳之助かい。 お袋は、身体の具合が悪そうだ、薬を飲まなきゃあ治らない。 柱の傷を見ても、思い出す。 俺が帰りゃあ、薬を飲んでくれるのかい。 徳! 夢か。 涙ぐんでるな、お袋の夢を見たな。 俺が見るのは、博打か、喧嘩の夢だ。 好きなのは、丁半。 丁にも半にも張っていて、当ったと手を伸ばすと夢だった。 酒飲んでいて、気に入らない野郎を殴ろうとしたら、殴られた。 夢だった、寝相の悪い熊の手だった。
兄ィ、ぶつけてんじゃないか。 弥次馬之助……、邪魔だ! 邪魔だ! 邪魔だ! いい火事ですな。 風がいいや、西北だ。 あんな所に蔵がある、だから金持、嫌いなんだ。 窓から煙が出てる、蔵に火が入った、しめた! 池に飛び込んで、火事を見てるのがいる。 流れてきた、おかわを被ろうとすると、「えっへん!」、中に人が入っていた。
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